お値段3万円の高性能CPU水冷ブロックを買ってみたのでレビューしてみる。
モデルの違いやオプション等
まずは、モデルの違いやオプション等について。
プラットフォームは、Intel LGA115x、Intel LGA20xx、AMD Socket AM4の3種類、上部カバーは、ニッケルメッキ、透明アクリル、アセタール樹脂の3種類、D-RGB(アドレッサブルRGB LED)の有無などの違いで、豊富にラインナップされている。上部カバーがニッケルメッキモデルと、一部のアセタール樹脂モデルは、D-RGBが搭載されていない。
EK-Quantum Magnitude D-RGB – AM4 Nickel + Acetal
個人的に良いと思ったのがアセタールのD-RGB搭載モデル。これすごく格好良い。厨二っぽいデザインだが、それが良い。残念ながら日本のショップで在庫が無かったので、管理人はアクリルモデルである「EK-Quantum Magnitude D-RGB – AM4 Nickel + Plexi」を購入した。別で購入したGPU水冷ブロックがアクリルモデルなので、見た目を合わせるというのも理由だが。取り寄せだと時間かかるし面倒なので、在庫のあるものを購入した。見た目にそこまで拘りはない。
EK-Quantum Magnitudeは、従来のモデルと比較して、表面積を50%拡大した独自マイクロフィン構造を採用している。
受熱ベースは銅製で、幅0.40mmのマイクロチャネルと、厚さ0.26mmのマイクロフィン構造、CPUのヒートスプレッダ形状に合わせて、受熱ベースが凸型に加工されている。なので、平面を出そうと研磨するのは厳禁である。CPUのヒートスプレッダを研磨したり社外品に交換している人向けに、フラット受熱ベース「EK-Quantum Magnitude Coldplate – Flat」がラインナップされている。
また、オプションでインナーフレーム「EK-Quantum Magnitude Accent」もラインアップされている。カラーバリエーションは8色となっている。
レビュー
水冷ブロック外観
CPUグリスは、Thermal Grizzly(通称:クマグリス)が付属している。中身が「Kryonaut」なのか「Hydronaut」なのか不明だが、高性能グリスなのは間違いない。別にCPUグリスを用意しなくとも問題ないだろう。ジェットプレートは組み込み済みのもので問題ないが、必要であれば付属のものに交換して使用する。どういった場合に付属のジェットプレートを使用するのかマニュアルには記載されていないので、普通は交換しないで良いと思う。
フレームはアルミ削り出しとなっており高級感がある。剛性は高く品質に問題はない。どう考えてもオーバークオリティである。ちなみに、管理人はこういった工業製品が大好きである。ディスプレイ用にもう1個欲しくなってきた。
受熱ベースには保護シールが貼ってあるので、取り付ける際に剥がすのを忘れずに。目立つ色なので普通は気づくと思うが。受熱ベースを良く見てみると、中心が僅かに盛り上がっており凸型に加工されていることが分かる。ちなみに、水冷ブロック本体から伸びているケーブルは、D-RGBの接続用ケーブル。アドレッサブルRGB LEDなので、間違えて4ピンRGBに接続しないこと。
こちらは今まで取り付けていた「EK-Quantum Velocity D-RGB – AMD Nickel + Acetal」である。EK-Quantum Magnitudeと比較すると見た目がだいぶ違う。こちらも十分格好良い。
水冷ブロック取り付け
市販のCPU空冷クーラー等と比較しても、CPU水冷ブロック単体の取り付けは左程難しくはない。まずはマザーボードに付いている純正の黒い樹脂製ブリッジと、バックプレートは使用しないので取り外す。
画像は既にネジ止めした状態であるが、バックプレートとマザーボードの間には付属のラバーシートを挟む。バックプレートは表裏の区別があるので注意する。
樹脂ワッシャーとスタンドオフスペーサーを取り付ける。ネジの外径が小さく多少遊びがあるので、なるべく真っ直ぐになるように位置を調整しながらスタンドオフスペーサーを締め込む。手でギュッと締め付ければ十分である。ペンチ等で強く締め付ける必要はない。
グリスを塗布したら水冷ブロックを取り付ける。4つのスプリングをフレーム内に挿入し、4本のネジを緩く締め込む。グリスを少し馴染ませたらネジを交互に少しずつ締め込んでいくのだが、全部締め切ってしまうと締め過ぎなので、どの程度締め込むかは感覚で調整する。マニュアルには平らになったら止める(機械訳)と書いてあるのだが、どことどこが平らなのか理解不能である。これはネジの頭とフレームが面一になったら締め込むのを止めるという意味だと思う。タワー型のようなデカい空冷クーラーに比べて応力はかからないので、グリスがしっかりと伸びる程度に締まっていれば、まず問題はない。尚、上の画像はネジを緩く締めた状態なので注意。
冷却水の流れる方向であるが、この水冷ブロックはインレットとアウトレットが指定されており、上の画像で言うと、左がインレット、右がアウトレットである。水冷経路を接続したら冷却水を注入。マニュアルには必ず24時間のリークテストを行うように書いてあるが、管理人の経験上、ポンプを回して最初に漏れが無ければまず問題ない。組み立てやパーツに問題があれば、ポンプを回せば直ぐに漏れが出てくる。これは経験談なので、心配であればちゃんと漏れがないか確認した方が良いだろう。
D-RGB搭載モデルでは、アドレス指定で光らせることが可能。LEDの個数は30個となっている。
検証
従来モデルである「EK-Quantum Velocity」と比較し、冷却性能に違いがあるのかを検証してみる。ラジエーターは「Black Ice Nemesis LS 360」をフロントとトップに配置、「Black Ice Nemesis LS 120」をボトムに配置している。ポンプはEKWBのVTXポンプ(DDC互換ポンプ)で、回転数は2400rpm(PWM25%)で固定。ファンは「Noctua NF-A12x25 PWM」を合計7個ラジエーターに取り付けている。回転数は900rpm(PWM35%)で固定。Ryzen 9 5950Xは、PBOを有効に設定し、自動オーバークロックが動作するようにしてある。
検証は定番のベンチマーク「Cinebench R20」を使用する。室温は約22℃。データにバラツキがないよう、パソコンが十分に温まっている状態で検証する。
パソコン構成 | ||
CPU | AMD Ryzen 9 5950X | |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3800C18D-64GTZN | |
マザーボード | MSI MEG X570 ACE | |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G | |
電源ユニット | Seasonic PRIME Titanium 850W | |
PCケース | Fractal Design Define 7 |
検証したデータをグラフにしてみた。
EK-Quantum Velocity →「Velocity」と表記
EK-Quantum Magnitude →「Magnitude」と表記
グラフの線は概ね一致しているが、僅かにEK-Quantum Magnitudeの方が低い気がする。まぁ誤差の範囲だろう。注目して欲しいのが後半のベンチマークが終了した後で、EK-Quantum Magnitudeの方が下がるのが早い。つまり、従来モデルよりも熱を素早く冷却水に移動させているということである。これは表面積を50%拡大した独自マイクロフィン構造を採用したことが効いているのであろう。最大温度を比較しても従来モデルより低めなので、EK-Quantum Magnitudeは性能的に文句の付けようがない水冷ブロックである。
まとめ
EK-Quantum Magnitudeは従来モデルと比較すると価格がおよそ2.5倍と高価であり、容易く手を出せる代物ではない。EKWBに拘らなければ、BYKSKI等のメーカー品でも5000円前後で購入できる。冷却性能だけで考えるなら、コスパは劣悪と言って良いだろう。普通に使用するのであれば従来モデルのEK-Quantum Velocityでも十分だし、これでも空冷に比べれば冷却性能は遥かに高い。
しかし、水冷パソコンに手を出すユーザーがコスパを重視するであろうか。管理人はコスパをあまり重視していない。予算が許すのであればハイグレードなパーツが欲しいし、作りや見た目も重要な要素である。所有している満足感を得て、パーツを眺めてニヤニヤするのも楽しみのひとつである。特に、見た目に拘るユーザーは多い。
価格を聞けばEK-Quantum Magnitudeはコスパを重視したモデルではないことが分かる。完全にハイエンドの領域にある製品だし、無駄に高品質なアルミ削り出しフレームを採用するなど、コスパという概念は無視している。もちろん、性能や品質を追求して価格が上がり過ぎれば誰も買えなくなってしまうので、この辺りは上手くバランスを取っているだろう。メインストリームのCPUが買えてしまう価格であるが、一度手にとってみれば十分に満足できる製品だと思う。管理人の満足度は非常に高い。