「EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 D-RGB」水冷ブロックで、「MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G」を水冷にしてみる。
購入したもの
RTX 3090 SUPRIM X対応水冷ブロックは「EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 D-RGB」で、「Nickel + Plexi」と「Nickel + Acetal」の2種類がラインナップされている。「Trio」とあるが、SUPRIMシリーズにも対応している。
「Nickel + Plexi」は、透明アクリルカバーとニッケルメッキされた銅製ブロックを組み合わせたもの。「Nickel + Acetal」は、ブラックのアセタール樹脂カバーとニッケルメッキされた銅製ブロックを組み合わせたもの。アクリルは見た目が映えるし人気が高いのだが、アセタール樹脂と比べると耐久性で劣る。ネジを強く締め付けたり、ホースの取り付けで無理に力をかけると、ネジ山付近にヒビが入ることもある。特に、アクリルはエタノールに非常に弱いので、ウェットティッシュ等のエタノールを含んだものでの掃除は厳禁である。
管理人が好むのはアセタール樹脂の方なのだが、日本のショップで取り扱っていることが稀である。取り寄せても需要がないのだろう。そこまで拘りはないので、今回は在庫のあったアクリルタイプを購入した。
上記の水冷ブロックを取り付ける場合、純正のバックプレートは取り付け不可能なので、必要なら別売りのものを用意する必要がある。「EK-Quantum Vector Trio RTX 3080/3090 Backplate」はアルミ削り出し製となっており、ニッケルメッキとブラックアルマイトの2種類がある。管理人はブラックアルマイトを購入した。写真だと艶消しに見えるが、実物は結構光沢がある。
水冷ブロックのレビューは「MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」を水冷化した記事があるので、こちらを参考にして欲しい。
GeForce RTX 3090 SUPRIM X 分解
※ビデオカードの分解はメーカーや代理店の保証対象外の行為になる可能性があるので自己責任で行うこと。
MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G
水冷ブロックを取り付けるので、ビデオカードの純正クーラーを取り外す。特に難しい工程はなく、ネジ、ファンやLEDのコネクタを外すだけである。ぱっと見てやり方が分からないようであれば、やらない方が良いと思う。壊す可能性が高い。ちなみに、ビデオカードは購入してからひと月程度使用して不具合がないかしっかりと確認してから分解した方が良い。管理人は我慢できずにすぐ分解しちゃうのだが・・・。
いきなり分解した状態。ブラケットは取り外さないと三枚おろしができないので取っ払ってある。コネクタは特に硬くもなくすんなり取り外せた。
バックプレートの厚みが従来のものより薄くなっているが、なんとメモリ冷却用に薄型のヒートパイプが搭載されている。冷却に命賭けているMSIならではの工夫と言えよう。これには驚いた。
バックプレートのヒートパイプは、上の画像のヒートシンク右側の面に接触している。
熱を持つコンポーネントの冷却用に大量のサーマルパッドが貼り付けてある。
GPUコアとの接触は、ダイレクトタッチ方式ではなく非接触式が採用されている。画像からは判断し難いが、ベース部分に接触するヒートパイプは断面が四角形に整えられており、隙間を最小限にしている。尚、ベースプレートは鏡面加工になっており、目視で確認した限り歪みは一切無い。
その他にも、フィンのエッジを波型に加工する「Wave-curved 2.0」や、フィンに三角形のデフレクタ(整流装置)を設けエアフローを改善する等、各所にMSI渾身の技術が取り入れられている。
RTX 3080 GAMING X TRIOの基板と比較すると、電源周りのコンポーネントやメモリチップの数が多い。写真を撮り忘れたが、裏側にも同じ数のメモリチップが搭載されている。
いきなり完成した状態。水冷ブロックの取り付け方法は先程紹介した別記事にある。手順は全く同じ。
ちなみに、水冷ブロックとバックプレートはちゃんと2セット用意したのだが、バックプレートの加工が面倒なので、RTX 3080 GAMING X TRIOに付けたものを取り外してRTX 3090 SUPRIM Xに取り付けた。
検証
ビデオカードの水冷化でどれ程効果があるのかを検証してみる。水冷と言っても、冷却性能はラジエーター容量やファンの性能等、環境で結構変わるので参考程度にして欲しい。
ラジエーターは「Black Ice Nemesis LS 360」をフロントとトップに配置、「Black Ice Nemesis LS 120」をボトムに配置している。ポンプの回転数は2800rpm(PWM40%)で固定。ファンは120mmサイズ最強の「Noctua NF-A12x25 PWM」を合計7個ラジエーターに取り付けている。回転数は900rpm(PWM35%)で固定。室温は約22℃。
検証は定番のベンチマーク「FF14 漆黒のヴィランズ」を使用する。解像度は4K、品質は最高品質の設定で行う。
パソコン構成 | ||
CPU | AMD Ryzen 9 5950X | |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC | |
マザーボード | MSI MEG X570 ACE | |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G | |
電源ユニット | Seasonic PRIME Titanium 850W | |
PCケース | Fractal Design Define 7 |
検証したデータをグラフにしてみた。
こちらはGPU温度を比較したグラフで、青い線が水冷化したグラフ、赤い線が純正クーラーのグラフとなっている。尚、純正クーラーのデータは、前回の記事で検証した時のデータを使い回している。
4K検証時のGPU消費電力はほぼ420Wに張り付いており非常に高い。検証で使用しているパソコンはラジエーター容量が大きめなので冷却には余裕があるが、それでも60℃近くまで上昇している。300W辺りまでのGPUであれば概ね50℃辺りに収まるのだが。逆に、純正クーラーの冷却性能の高さをアピールする検証となってしまった。静音性に関しても純正クーラーは十分静かなので、余程の事がない限りRTX 3090 SUPRIM Xを水冷化する必要は無いだろう。
こちらはGPUクロックを比較したグラフで、青い線が水冷化したグラフ、赤い線が純正クーラーのグラフとなっている。僅かであるが、水冷化した方がGPUクロックが高いことが分かる。
NVIDIAのGeForceシリーズは自動オーバークロック機能である「GPU Boost 4.0」機能があり、電力制限(Power Target)と温度制限(Temperature Target)の範囲内であれば、クロックが自動で上昇する。サーマルスロットリングが発生していなくても、GPU温度が低い方が動作クロックは高くなる傾向が強いので、オーバークロックをしたり、より性能を引き出したい変人であれば、水冷化は大変おすすめできる。
ちなみに、RTX 3090 SUPRIM Xは既に大幅にオーバークロックされているようで、水冷化してもGPUクロックはあまり伸びなかった。FEやオーバークロックのゆるいモデルであれば、水冷化で100MHzとか普通に上昇するのだが。
RTX 3090 SUPRIM Xに限って言えば、水冷化による性能の違いを体感することはほぼ不可能だろう。普通の人にとっては水冷化のメリットは無いかも知れない。
余談
「RTX 3080 GAMING X TRIO」水冷化に引き続き「RTX 3090 SUPRIM X」も水冷化してしまったが、高級モデルのクーラーを取り外すのは普通の人からしたら狂気の沙汰かも知れない。管理人は見栄えよりもブーストクロックの高さに魅力を感じてRTX 3090 SUPRIM Xを選んだのだが、実は見た目も大変気に入っている。ガラスパネルのケースであれば、CPUのみ水冷化して、RTX 3090 SUPRIM Xは垂直配置にして魅せるPCにするだろう。こんな格好良いビデオカードを分解するなんてとんでもない。