前回アップした「KENSTYLEステアリングレビュー」の記事で、一部の画像に写っている追加メーターに関して何件か問い合わせがあったので記事にしてみる。ちなみに、メーターはレビューする気がなかったので画像は少なめ。
エンジン回転信号について
車両に追加メーターを取り付けて動作させるには、電源ハーネスやセンサー類を接続する必要がある。一般的には、常時12V(+B)、イグニッション(IGN)、アース(GND)、イルミ(ILM)、センサー類を接続する。電源はアクセサリー用のオプションカプラーやオーディオ配線等から取れるが、タコメーターの場合は回転信号(エンジン回転数出力)を取る必要がある。通常はECUにある回転信号線から分岐させる方法が確実だが、OBDⅡ(故障診断コネクター)から取る方法もある。OBDⅡコネクターの9番ピンに回転信号線が直接配線されている車種(トヨタ車等)であれば、そこから分岐させるのが最も手軽であるが、現時点では配線されている車種の方が少ない。ECU、OBDⅡ共に回転信号線がない場合は、OBDデータを取得し、対応した機器を介して信号を取り出す必要がある。
自動車が趣味であれば知っている人もいると思うが、ECUとOBDⅡ機器との接続は、通信プロトコルで1対1と定められており、車両に接続可能なOBDⅡ機器は1台のみとなる。他に接続を優先する機器があれば、OBDⅡからは回転信号を取れない。もっとも、OBDⅡは本来整備士が故障診断を行う際に使用するものであり、ユーザーが常時利用するためのものではない。OBDⅡに何かしら接続していると、ECUの故障診断プログラムが常に動作状態になる車種もあり、接続する機器によってはバッテリー上がりの原因になる事がある。複数の機器を接続しても正常に動作する事もあるが、OBDⅡに関して話すと長くなるのでそれはまたの機会に。OBDⅡを利用する場合は自己責任で。
イグニッションコイルの点火信号線(イグニッションコイルのカプラーやECUのカプラーにある線で、4気筒エンジンなら4本ある)から取る方法もあるが、アクセルオフでイグニッションプラグの点火が止まる方式の車種だと、アクセルオフの度にタコメーターが0回転の表示になるという問題がある。気にならない人ならこれでも構わないが、普通は気になるだろう。管理人はOBDⅡを利用している機器は他に接続していないし、純正配線はなるべく加工したくないので、回転信号はOBDⅡから取る方法を選択した。
尚、ヴェゼル ハイブリッドの場合はアクセルオフで点火が止まる仕様である。管理人的には安定動作が絶対条件なので、点火信号から取る方法は選択肢にない。最近のクルマは回転信号線がないものが多いので、タコメーターの取り付けに難儀する人が多いかも知れない。OBDⅡはレーダーとか他の機器を取り付けている人が多いし。
ひとつ注意として、点火信号はあくまで点火信号なので、車種の仕様や、取り付ける社外タコメーターの仕様を良く確認した方が良い。特に、点火信号から取る場合は注意が必要で、タコメーターから電流が逆流したりショートしたりすれば、車両にダメージを与えかねない。中には点火信号、回転信号、その他センサー類の区別がつかずに配線し、アクセルオフで0表示になったり、異常な動作をしたりと悩まされている人を見かける。電装系は中途半端なスキルでいじると取り返しがつかなくなることもあるので、自信のない人はプロに任せる事をおすすめする。
接続方法について
管理人が取り付けている追加メーターは「Defi-Link ADVANCE A1」シリーズの、60φ タコメーターである。同メーカーのフィッティングキット(品番:DF09501)を使用してAピラーに取り付けている。インパネ中央に貼り付けるのも悪くはないが、メーターがひとつだけなのでそれだと見栄えが悪い。複数取り付けるならインパネ中央が良いと思う。まぁこのクルマで他にメーターを設置する気は起きないが。
タコメーターに関しては、他に80φサイズのラインナップがある。種類は9000rpmモデルと11000rpmモデルの2タイプ。60φサイズは今の所9000rpmモデルのみ。ヴェゼルのレッドゾーンは7000rpmなので、9000rpmまで表示があれば十分。
ADVANCEシリーズのメーターは単体では動作しないので、「Defi-Link ADVANCE コントロールユニット」もしくは「ADVANCE CAN Driver」が必要になる。OBDⅡからデータを取得する場合は、ADVANCE メーターとADVANCE CAN Driverの組み合わせが最小構成になる。
ひとつ注意として、ADVANCE CAN Driverに接続可能なメーターは、ADVANCEシリーズの「タコメーター」「ターボ計(120kPa・200kPa)」「インマニ計」「水温計」のみとなり、同時接続数は3台までという制限がある。4台以上の取り付けや、油圧計等、他のメーターを取り付けたい場合は、ADVANCE コントロールユニットを追加する必要がある。
また、ADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverは機能に差があるので、全ての機能を利用したいのであれば、ADVANCE コントロールユニットは必要になる。詳しくはメーカーサイトで確認して欲しい。
ADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverの両方を接続するのであれば、ADVANCE CAN Driverは車速/回転信号(ST/TAパルス)を、ADVANCE コントロールユニットに送信する機器として使用することになる。言うまでもないが、OBDⅡからの車速/回転信号が不要な場合、ADVANCE CAN Driverは当然不要になる。
管理人はメーター照明の明るさ変更(イルミON・OFF時各5段階調整)とブザー音が欲しかったので、ADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverの両方を取り付けている。これらの機能はどちらもADVANCE コントロールユニットのものである。補足であるが、ADVANCE CAN Driverのみでもイルミ信号が入ればメーター照明は減光されるので夜の心配は無用。そこまでポンコツではない。
もうひとつ重要な機能(?)であるオープニングデモとエンディングデモ。これらはADVANCE CAN Driverのみでも動作するが、ブザー音を鳴らす機能はADVANCE コントロールユニットのものなので、オープニンデモ終了時に鳴る「ピピッ」という起動音や、ピーク時の「ピーッ」というワーニング音が欲しい場合は、ADVANCE コントロールユニットが必要になる。個人的にお気に入りなのは、起動時の音。ADVANCEシリーズを使ったことのある人なら分かってくれるはず。カッコいいんだよね、あれ。
ADVANCE CAN Driverの電源ハーネスの接続先は、イルミ線(プラス・マイナス各1本どちらか接続)、スイッチ入力線(必要な場合のみ接続)、電源線(シガーソケット)になっている。何故電源線にシガーを採用しているのか理由は不明であるが、管理人はシガーソケットは嫌なので、シガー配線は途中で切断し、適切なヒューズを介してイグニッション電源に接続している。国産車はシガー電源がアクセサリーかイグニッションのどちらかであるが、ヴェゼルはアクセサリーである。ADVANCE コントロールユニットの電源ハーネスは、常時12V、イグニッション、アース、イルミなので、両方同じになるようにした訳だ。個人的にはハーネスの加工は推奨しない。やる場合は自己責任で。
最後に、OBDⅡ接続の場合にバッテリー上がりを懸念する人がいると思うが、ADVANCE CAN Driverはシガーソケットからの電力を受けて本体の電源が入る仕組みになっていると思われる。以下、説明書から引用。
■消費電流 ( メーター 3 台接続時の最大値 ): ACC 1A(IGN ON 時) 暗電流 0mA
ILM 線 0.5mA
使っていなければ本体の電源はちゃんとオフになる設計なので、バッテリー上がりの心配はない。もしこれがバッテリー上がりの原因になるとしたら車両側の問題である。その場合は何かしらの対策が必要になるだろう。管理人のヴェゼルは2~3週間放置でも全く問題ない。
パーツ取り付け
※電装系をいじる場合は必ずバッテリーのマイナス端子を取り外すこと。最近のクルマはハイテクなので、バッテリーを接続したままの電装いじりはトラブルの元になることが多い。
ADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverは、純正メーター裏側のスペースに設置することにした。他に良さそうな場所が見当たらない。
上の画像はまだADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverを取り付けていない状態。左側にある灰色のユニットはディーラーオプションのコーナーセンサーのユニットで、ブザー音を鳴らすための小型スピーカーが付いている。サイバーナビやオーディオ等を取り付けているので少々配線が追加されている。
余談だが、GPSアンテナとETCアンテナもインパネ内側に設置してある。GPSアンテナは、純正と全く同じ位置であるエアコンダクト上のスペースに取り付けてある。ETCアンテナはインパネ裏側に、受信部が上に向くように貼り付けてある。
ADVANCE コントロールユニットとADVANCE CAN Driverを取り付けた状態。ADVANCE CAN Driverは、コーナーセンサーのスピーカーを剥がし、ユニットの上に直接貼り付けた。ADVANCE コントロールユニットも、車両側のスマートユニットに厚手のスポンジテープで貼り付けた。実はこの配置は結果的に失敗で、純正メーターの配線とカプラーがADVANCE コントロールユニットに接触してしまい、純正メーターが1センチ程浮いてしまった。
画像だと少し分かり難いが、角度調整が可能なステーを同じ角度で2個取り付けて、純正メーターのカプラーに接触しないようADVANCE コントロールユニットの取り付け角度を変更した。これで純正ハーネスが通るスペースを確保できたので、純正メーターが問題なく収まるようになった。ADVANCE コントロールユニット本体にはブザー音を鳴らすスピーカーが内蔵されているので、この位置であれば音が良く聞こえる。もっとも、起動音以外は普段鳴ることは無いのだが。使用したステーは↓のETCアンテナ用ステー。
タナックスのステーは無駄に鉄板の厚みがあり、ボルトとナットで角度を強力に保持できるので、耐久面での心配は無用である。内装用耐熱両面テープで固定したので、真夏の炎天下の車内でも剥がれることはない。
電源系の配線は電装品用のオプションカプラーがあるので、↓のカプラーを利用して取り出した。
回転信号以外はこのカプラーから全て取れる。ピカイチのカプラーは高品質なのでおすすめ。尚、このオプションカプラーをヴェゼルで使用する場合、常時12V(+B)の配線は、「黄」と「黄/赤」の2本あるが、黄/赤はドアロック時に電源供給がストップする(イグニッションON時はドアロックに関係なく常時12V)ので注意。
ADVANCE コントロールユニット本体に付属しているコントローラーは、運転席右側のエアコン吹出口下にあるパネルに取り付けてある。美しく見せる為にパネルに直径5mmの穴を空けて配線を通している。
コネクターは大きすぎて5mmの穴には通らないので、通すときに一度コネクターを分解している。ここのパネルはいくらもしないので、いざとなれば新品に交換すれば良い。このコントローラーはイルミ信号が入ると照明がホワイトカラーで点灯するので夜でも見やすい。尚、明るさは固定の模様。
タコメーター本体は、運転席側Aピラーに取り付けた。メーター用ハーネスは、ピラーを外せるように途中に4Pカプラーを割り込ませて分解できるようにしてある。
Defiのメーターはどれも見た目が最高にカッコいいし(主観)見ていて楽しい。しかしながら、このタコメーターを満足に動かす為だけに5万円以上のコストがかかっているので、現時点でのコストパフォーマンスは良いとは言えない。ADVANCE コントロールユニットかADVANCE CAN Driverのどちらかを妥協しても、メーターと合わせて3万円半ばである。これでも高い。予算が限られるなら、PIVOT辺りの安価なカプラーオンタイプのメーターを選択するのが普通だろう。価格は1~2万円辺りと、Defiに比べれば十分安価である。
以下の製品のように、OBDⅡのみの接続で動作する製品もあるが、動作が安定するかは不明。車種によってはトラブルが起きたりする可能性もある。まぁ正常に動くなら問題ないのだろうが。
管理人のヴェゼルに限って言えば、Defi-Link ADVANCEメーターに関してはトラブルフリーである。動作は極めて安定しており、誤作動は一切ない。
EV走行になればタコメーターの指針は0を指し、エンジン走行になれば正しい回転数を表示する。アイドリングストップからの発進時にオープニングデモが動作することはない。ハイブリッドシステムが起動していれば、タコメーターの電源がオフになることもない。これらは当たり前のようなことであるが、一部のカプラーオンタイプのOBDⅡ接続タコメーターは満足に動作しないものがある。ハイブリッド車やアイドリングストップ車に対応と謳っていても、物によっては誤作動することがある。車両のエンジンを切って、直ぐ再始動したらメーターが反応しない等。(経験者は語る)
購入する際は、対応車種であるのか、上手く動作するのか、しっかりと調べてからの方が良いだろう。
使用したパーツ一覧
- Defi-Link ADVANCE A1 タコメーター 9000rpm (60φ) DF17501
- フィッティングキット DF09501
- ADVANCE CAN-DRIVER OBDIIハーネス付 DF15601
- コントロールユニット Defi-Link ADVANCE用 DF07703
- ADVANCEメーターハーネス1m PDF07709H
以下、Amazonリンク。追加のメーター用ハーネスが必要であれば、0.5m、1m、2mのラインナップがある。コントロールユニットには2mのハーネスが付属している。