RTX 2080 Tiと同等性能!オーバークロック仕様の「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」をレビュー!
特徴とスペック
NVIDIA GeForce RTX 3070を搭載。トリプルファンクーラー「Tri Frozr 2」を採用するオーバークロック仕様のグラフィックボード
- NVIDIA GeForce RTX 3070搭載
- オリジナルトリプルファンクーラー「Tri Frozr 2」採用
- ブーストクロック 1,830MHz
- メモリクロック 14,000MHz
- 8GB GDDR6 256bitメモリ搭載
- DisplayPort×3、HDMI 映像出力端子装備
- ボード1枚で4画面出力が可能
- NVIDIA DLSS、G-SYNC対応
- DirectX 12、OpenGL 4.6、Vulkanをサポート
- LEDカラーのカスタマイズが行える「Mystic Light」
- MSI独自のユーティリティツール「アフターバーナー」
- 専用ユーティリティ「Dragon Center」対応
主なスペック
GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO |
GeForce RTX 2080 Ti FE | GeForce RTX 2080 SUPER | GeForce RTX 2070 SUPER | |
GPUアーキテクチャ | Ampere | Turing | Turing | Turing |
製造プロセス | 8nm | 12nm FFN | 12nm FFN | 12nm FFN |
GPUコア | GA104 | TU102 | TU104 | TU104 |
トランジスタ数 | 174億 | 186億 | 136億 | 136億 |
ダイサイズ | 392 mm² | 754 mm² | 545 mm² | 545 mm² |
CUDAコア数 | 5888 | 4352 | 3072 | 2560 |
RTコア数 | 46 | 68 | 48 | 40 |
Tensorコア数 | 184 | 544 | 384 | 320 |
TMU数 | 184 | 272 | 192 | 160 |
ROP数 | 96 | 88 | 64 | 64 |
ベースクロック | 1500MHz (GPUーZ読み) |
1350 MHz | 1650 MHz | 1605 MHz |
ブーストクロック | 1830 MHz (FE:1725 MHz) |
1545 MHz | 1815 MHz | 1770 MHz |
メモリ規格 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ容量 | 8 GB | 11 GB | 8 GB | 8 GB |
メモリ速度 | 14 Gbps | 14 Gbps | 15.5 Gbps | 14 Gbps |
メモリバス幅 | 256 bit | 352 bit | 256 bit | 256 bit |
メモリ帯域幅 | 448 GB/s | 616 GB/s | 496 GB/s | 448 GB/s |
消費電力 | 240W (FE:220W) |
250W | 250W | 215 W |
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO(以下、RTX 3070 GAMING X TRIO)のベースクロックは非公開なのだが、GPUーZ読みで1500MHzだった。これはFounders Editionと同じ数値。
メモリ規格が、上位のRTX 3080は「GDDR6X」だが、RTX 3070は「GDDR6」となっている。
バスインターフェースは、RTX 20シリーズまではPCI Express 3.0だったが、RTX 30シリーズからPCI Express 4.0に対応している。
レビュー
パッケージと付属品
MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G(以下、RTX 3080 GAMING X TRIO)にはグラフィックカードサポートブラケットのスペアのラバークッション(?)が付属していたのだが、こちらには見当たらない。そもそもスペアなのかすら不明だが。
上の画像は、RTX 3080 GAMING X TRIOに付属のグラフィックカードサポートブラケットとスペアのラバークッション。
グラフィックカード本体外観
冷却用ファンは 、一対のファンブレードをリンクされた外輪で結合させた独特の形状。通常のファンよりもエアフローを集中させることが可能となっているようだ。
ファンサイズは約90mmで同じものが3基搭載されており、軸はダブルボールベアリング仕様になっている。ファンのデフォルト制御はセミファンレスモードなので、負荷が小さくてGPU温度が一定以下(55℃以下)だと、ファンの動作は停止する。負荷が低いと60℃弱でも停止しているので、負荷とGPU温度の両方を監視していると思われる。
ファンの隙間からヒートシンクが見えるがフィンの形状に注目して欲しい。エッジが波型になっており、表面積を稼いでいることが分かる。MSI公式サイトによると「Wave-curved 2.0」というものらしい。
側面を見るとフィンには三角形のデフレクタ(整流装置)がある。より多くの表面積を作り出していると同時にエアフローを改善している。ヒートシンク端にはカードを固定する為であろうネジ穴がふたつある。公式サイトやマニュアルを見てもこのネジ穴が何であるのか説明が無いので断定はできないが、恐らく対応しているケースであれば固定できるようになっていると思われる。
ヒートシンクのヒートパイプはダイレクトタッチ方式を採用している。一部のユーザーからは微妙に思われるダイレクトタッチ方式であるが、RTX 3070 GAMING X TRIOの場合はヒートパイプの形状を四角形に整え、ヒートパイプ同士とコアに接触する部分の隙間を最小限にしている。
熱を持つコンポーネントにはサーマルパッドを使用している。ヒートシンクに熱を伝え、冷却性能を向上させている。
無駄がない程ヒートシンクで埋め尽くされている。見た目だけでかなり冷却性能が高そうな事が分かる。
RTX 30シリーズのトレンドなのか、グラフィックカードのヒートシンクは基板より長く作っているメーカーが多い。バックプレートにスリットを設け、ファンのエアフローを改善している。尚、このスリットは上位モデルのRTX 3080 GAMING X TRIOには存在しない。
剛性を高める為に金属製の反り曲げ防止ストラップが取り付けられている。付属のグラフィックカードサポートブラケットと併せれば反ることはないだろう。バックプレートは金属製ではなく「複合グラフェン」という素材を使用したものになっている。熱伝導性に優れ、軽量で高強度なのが特徴。硬質な素材だが、触った感じではアルミより柔らかい。しかし、これでも強度に問題はないのだろう。カード本体の剛性は十分である。
グラフィックカードサポートブラケットは軽量であるがかなり頑丈に作られている。ケース側の強度が十分であれば、たわむことはないだろう。
RTX 3080 GAMING X TRIOとの違い
特徴を見る限り、RTX 3070 GAMING X TRIOは、上位モデルのRTX 3080 GAMING X TRIOと同じような仕様である。似たようなクーラーなので全く同じに見えるのだが、比べてみるとヒートシンクの形状が異なるのが分かる。
RTX 3080 GAMING X TRIOの方が重量があるし、ヒートシンクのフィンもRTX 3070 GAMING X TRIOより多い。しかし、RTX 3070 GAMING X TRIOの消費電力は、RTX 3080 GAMING X TRIOより100W程低い。クーラーが違うからケチっているのかと思う人もいるかも知れないが、実際の冷却性能はどちらもオーバースペックである。クーラーが違うからと言って気にする必要はない。
サイズとインターフェース
RTX 3070 GAMING X TRIO カード本体のサイズは、323 x 140 x 56mmで、重さは1441g。長さが300mmを超えてくると一部のミドルタワーケースでは収まらない。
奥行きにも注意が必要で、目視でブラケットから35mm程突き出している。補助電源コネクタの部分は10mm程引っ込んではいるが、幅の狭いケースでは補助電源ケーブルが取り付け困難になる可能性がある。その場合はL型変換ケーブルを使用するなり工夫しよう。
DirectX対応バージョン | 12 API |
OpenGL対応バージョン | 4.6 |
最大同時出力画面数 | 4 |
映像出力端子 |
DisplayPort x 3 (v1.4a) / HDMI 2.1 x 1
|
最大画面解像度(デジタル) | 7680×4320 |
インターフェースは、DisplayPort x 3 (v1.4a) / HDMI 2.1 x 1 で、最大同時出力画面数は4画面、最大画面解像度は7680×4320、DirectX対応バージョンは12 API、OpenGL対応バージョンは4.6となっている。
補助電源コネクタ数は2本で、どちらも8ピン仕様になっている。最近の電源は大抵8ピン2本はあると思うので、補助電源コネクタ数が足らなくなる人はあまりいないだろう。エントリークラスの電源では8ピン+6ピンというのもあるので、導入する際は補助電源コネクタと電源容量が足りるか確認しよう。MSIが公開している推奨電源ユニット容量は650Wとなっている。
動作モードとイルミネーション
RTX 3070 GAMING X TRIOはメーカーが配布している専用ユーティリティで動作のモードを設定できる。定番の「Afterburner」や「Dragon Center」がそれである。AfterburnerはオーバークロックツールなのでインストールしなくてもRTX 3070 GAMING X TRIOは問題なく動作するが、Dragon Centerでは細かい制御が不可能なので、オーバークロック等、細かく動作を設定したい場合はAfterburnerをインストールすると良い。AfterburnerとDragon Centerは併用可能なので、管理人は両方インストールしてある。ダウンロードは下記の公式サイトから行える。
Dragon Centerを利用すれば、RTX 3070 GAMING X TRIOの動作モードやセミファンレスの切り替えが行える。下のスクショはDragon Centerのウィンドウ。
※この項目の画像はRTX 3080 GAMING X TRIOレビューのものを使いまわしている。
ホームタブにある「User Scenario」を開くと5つのアイコンがあるが、これは動作モードの種類になる。パフォーマンス、バランス、サイレント、クリエイト、カスタムの中から選択できる。何も選択していない状態ではデフォルト動作になる。パフォーマンスモードにするとブーストがかかるので、オーバークロック状態になりファンの速度も上昇する。サイレントモードにすると、静音性を優先してクロック周波数等が低めになりファン速度も低くなる。好みのモードを選ぼう。
カスタムモードの設定であるが、設定アイコンをクリックすると設定ウィンドウが開く。ここではCPUやGPU等の動作をある程度細かく設定できるようになっている。パワーリミットの調整は行えないので、細かく設定したいのであればAfterburnerの方で行う。管理人が試した限りでは、クロック周波数やメモリ周波数はDragon Centerの設定が優先される。パワーリミット等、Dragon Centerに無い項目はAfterburnerの設定で動作する。
セミファンレス動作の切り替えは、ツールタブにある「Graphics Fan Tool」で行う。「Zero Frozr」が有効になっていれば、セミファンレスモードに対応しているものはセミファンレスモードで動作するようになる。セミファンレスなのにファンが常時回ってる!という場合はここの設定を確認しよう。「クーラーブースト」というのはスタートさせると数十秒間ファンが全開で動作する。手動でクールダウンさせたいときに使おう。放っておけば勝手に動作は止まる。
イルミネーション設定は、ホームタブにある「Mystic Light」で行う。以前は「Mystic Light 3」というユーティリティでイルミネーションの制御は行えたのだが、現在、RTX 3070 GAMING X TRIOのページにはMystic Light 3のダウンロードリンクが存在しない。このユーティリティはDragon Centerに統合されているので、イルミネーションの設定を行うにはDragon Centerが必要になる。
ちなみに、CPUとGPUの温度に対してシステムファンの速度を調整可能なユーティリティもある。
この「FROZR AI Cooling」はシステムファンの速度を調整するもので、マザーボードに搭載されているファンコントローラーよりも賢い。マザーボードの方だとシステムファンの制御は、CPUやGPU等、どれを監視して制御するのかをひとつしか選べないが、FROZR AI CoolingではCPUとGPUを同時に監視している。つまりどちらか一方が高負荷になれば、その負荷に応じてシステムファンの速度を調整してくれる。設定次第ではあるが、CPUが40℃辺りでも、GPUが70℃になればシステムファンの速度は上昇する。当然逆も動作する。自分で設定したい場合は、マニュアルモードを選択する。
グラフはシステムファンの速度を表すものであり、赤い方がCPU、青い方がGPUとなっている。緑色の丸いアイコンは現在の値。上の画像の状態では、GPUの設定した値よりも緑の丸は低い位置にあるが、これはGPUの温度が60℃を下回っているからである。特に難しいユーティリティではないので、Dragon Centerをインストールしたら活用してみよう。
尚、他メーカーのマザーボードで動作するかは不明である。
検証
CPUは「Ryzen 9 3900X」Precision Boost Overdrive有効。メモリ速度は3600MHz。ベンチマークソフトは「FF14 漆黒のヴィランズ」を使用する。ベンチマークは、フルHD、WQHD、4Kをそれぞれ最高品質の設定で行う。ドライバソフトは現時点で最新であるNVIDIAの「GeForce 457.09 Driver」を使用する。RTX 3070 GAMING X TRIOの各制御はデフォルト設定となっている。使用するユーティリティは「Dragon Center 2.0.86.0」、「Afterburner 4.6.2」どちらも現時点で最新バージョン。
ケースは「Fractal Design Define 7」で、ケースファンは付属のものではなく140mmサイズの「NF-A14 ULN」を取り付けてある。吸気側ふたつ、排気側ひとつの構成で、回転数は600rpmで固定にしている。室温は24℃。パソコンの構成はミドルハイスペックを意識してみた。
RTX 3070の性能はRTX 2080 Tiと同等と言われている。比較用に「MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」(以下、RTX 2080 Ti GAMING X TRIO)を用意した。
パソコン構成 | ||
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO |
MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO
|
CPU | AMD Ryzen 9 3900X | |
CPUクーラー | Noctua NH-U12A | |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC(速度3600MHz) | |
マザーボード | MSI MEG X570 UNIFY | |
電源ユニット | オウルテック Seasonic FOCUS+ SSR-750PX | |
PCケース | Fractal Design Define 7 |
検証した結果をグラフにまとめてみた。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO → グラフでは「RTX 3070」と表記
MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO → グラフでは「RTX 2080 Ti」と表記
スコアを見ると両者は殆ど互角の性能に見えるが、負荷の高くなるWQHDや4Kではフレームレートに差が開いている。特にWQHDの最小フレームレートで差が開いており、RTX 3070 GAMING X TRIOよりもRTX 2080 Ti GAMING X TRIOの方が高負荷時の処理性能が高いことが分かる。FF14ベンチマークではこのような結果になったが、ゲームのタイトルによっては逆転する可能性もある。両者の性能は互角と言って良いだろう。重い4K解像度でもRTX 2080 Tiとほぼ互角の性能を発揮しているRTX 3070は凄い。
WQHD解像度のベンチマークのログを「HWiNFO64」で記録してみたので、GPU温度、ファン速度、GPUクロック、消費電力をグラフにしてみた。
RTX 3070は消費電力が低いので、当然発熱もRTX 2080 Tiに比べて少ない。RTX 3070 GAMING X TRIOはオーバークロックモデルであり、Founders Editionより20W程多いが、RTX 2080 Ti GAMING X TRIOは300Wなので、それに比べればかなり低い。クーラーの冷却性能はどちらも優秀なのだが、RTX 3070 GAMING X TRIOの冷却性能はオーバースペックなようだ。ケースに入れた状態で60℃辺りをキープしているのを見ると驚きを隠せない。
GPU温度が低いからファン速度は高いのだろうと思ったがそんなことはなかった。RTX 3070 GAMING X TRIOに搭載されているファンは1500回転を超えなければとても静かなので、ベンチマーク中でも回っているのか回っていないのか分からない程静かであった。RTX 2080 Ti GAMING X TRIOのファンはベンチマーク開始からすぐに回りだしているが、RTX 3070 GAMING X TRIOはGPU温度が55℃を超えるまで停止している。
ちなみに、RTX 2080 Ti GAMING X TRIOを別のパソコンでログ取ったときのファンの変動は、RTX 3070 GAMING X TRIOのように滑らかな制御だったのだが。AfterburnerやDragon Centerのバージョンも同じだし、違いといえばマザーボードくらい。うーん、良く分からん。今度色々検証してみよう。
GPUクロックは最初から最後まで概ね1900MHzを超えている。瞬間で2000MHzを超えることがよくあり、GPUクロックはとても高い。オーバークロックで常時2GHzを狙えそうである。
最後に消費電力の推移を見てみる。このグラフの数値は「HWiNFO64」で取得したものなのでソフト読みになる。
RTX 3070 GAMING X TRIOの消費電力は240Wで、グラフの数値も概ね一致している。RTX 2080 Ti GAMING X TRIOと殆ど変わらない性能であることを考えると驚異である。尚、RTX 2080 Ti Founders EditionのTDPは250Wなので、これと比べた場合は消費電力に大きな差はないかと思われる。
総合評価
○ 良いと思った点
- オリファンモデルトップクラスのブーストクロック
- 非常に高い冷却性能と静音性
- コイル鳴きはほぼ無し
- RTX 2080 Tiと同等性能であり省電力
✕ 悪いと思った点
- 若干高価
消費電力を気にする人にとっては今回のRTX 3070は有力な候補だと思われる。RTX 3070 GAMING X TRIOはオーバークロックモデルなのでFounders Editionより消費電力が20W多くなっているが、RTX 3080の320Wに比べればとても省エネである。少しでも高性能なオーバークロックモデルが欲しいという人に「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」はおすすめである。冷却性能と静音性が驚異的なレベルなので、購入して後悔する人はいないだろう。
ひとつ欠点を上げるとすれば価格である。RTX 3070 GAMING X TRIOは、RTX 3070のオリファンモデルの中でも割と高価な部類である。管理人は快適性と安定性はとても重要だと思っているので、多少高価でもクーラーに余裕のあるモデルを選択している。動作が煩いビデオカードを歓迎する人はいないと思うし、神経質な人であれば尚更。この辺りは人によって考え方が違うだろうし、自分に合っているものを選択すれば良い。主力モデルであればコスパを重視する人は多いだろう。