先代のウルトラハイエンドであるRTX 2080 Tiより消費電力の高いRTX 3080。非常に高速なGPUであるためパワーを持て余している人も多いだろう。今回は、消費電力を下げつつパフォーマンスアップを狙える「パワーリミット」を調整しながら検証してみる。
特徴とスペック
NVIDIA GeForce RTX 3080を搭載。トリプルファンクーラー「Tri Frozr 2」を採用するオーバークロック仕様のグラフィックボード
- NVIDIA GeForce RTX 3080搭載
- オリジナルトリプルファンクーラー「Tri Frozr 2」採用
- ブーストクロック 1,815MHz
- メモリクロック 19,000MHz
- 10GB GDDR6X 320bitメモリ搭載
- DisplayPort×3、HDMI 映像出力端子装備
- ボード1枚で4画面出力が可能
- NVIDIA DLSS、G-SYNC対応
- DirectX 12、OpenGL 4.6、Vulkanをサポート
- LEDカラーのカスタマイズが行える「Mystic Light」
- MSI独自のユーティリティツール「アフターバーナー」
- 専用ユーティリティ「Dragon Center」対応
主なスペック
GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G |
GeForce RTX 2080 Ti FE | GeForce RTX 2080 SUPER | GeForce RTX 2070 SUPER | |
GPUアーキテクチャ | Ampere | Turing | Turing | Turing |
製造プロセス | 8nm | 12nm FFN | 12nm FFN | 12nm FFN |
GPUコア | GA102 | TU102 | TU104 | TU104 |
トランジスタ数 | 280億 | 186億 | 136億 | 136億 |
ダイサイズ | 628 mm² | 754 mm² | 545 mm² | 545 mm² |
CUDAコア数 | 8704 | 4352 | 3072 | 2560 |
RTコア数 | 68 | 68 | 48 | 40 |
Tensorコア数 | 272 | 544 | 384 | 320 |
TMU数 | 272 | 272 | 192 | 160 |
ROP数 | 96 | 88 | 64 | 64 |
ベースクロック | 1440MHz (GPUーZ読み) |
1350 MHz | 1650 MHz | 1605 MHz |
ブーストクロック | 1815 MHz (FE:1710 MHz) |
1545 MHz | 1815 MHz | 1770 MHz |
メモリ規格 | GDDR6X | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ容量 | 10 GB | 11 GB | 8 GB | 8 GB |
メモリ速度 | 19 Gbps | 14 Gbps | 15.5 Gbps | 14 Gbps |
メモリバス幅 | 320 bit | 352 bit | 256 bit | 256 bit |
メモリ帯域幅 | 760 GB/s | 616 GB/s | 496 GB/s | 448 GB/s |
消費電力 | 340W (FE:320W) |
250W | 250W | 215 W |
上の表はRTX20シリーズと、MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G(以下、RTX 3080 GAMING X TRIO)を比較したものである。RTX 3080 GAMING X TRIOのベースクロックはメーカー非公開なので「GPU-Z」で読み取った値になっている。
検証
CPUは「Ryzen 9 3950X」Precision Boost Overdrive有効。メモリ速度は3600MHz。ベンチマークソフトは超定番「FF14 漆黒のヴィランズ」を使用する。ベンチマークの設定はWQHD最高品質の設定で行う。ドライバソフトは現時点で最新であるNVIDIAの「GeForce 457.09 Driver」を使用する。RTX 3080 GAMING X TRIOのBIOSは、デフォルトである「Low Noise BIOS」のままである。使用するユーティリティは「Dragon Center 2.0.86.0」、「Afterburner 4.6.2」どちらも現時点で最新バージョン。
ケースは「Fractal Design Define 7」で、ケースファンは付属のものではなく「NF-A12x25」を取り付けてある。吸気側3つ、排気側ひとつの構成で、回転数は800rpmで固定にしている。室温は24℃。
パソコン構成 | ||
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G | |
CPU | AMD Ryzen 9 3950X | |
CPUクーラー | Noctua NH-U12A | |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC(速度3600MHz) | |
マザーボード | MSI MEG X570 ACE | |
電源ユニット | Seasonic PRIME Titanium 1000W | |
PCケース | Fractal Design Define 7 |
パワーリミットの調整は、MSI純正ユーティリティの「Afterburner」で行う。100%から50%までを10%刻みで検証してみる。各ステータスのログは「HWiNFO64」で取得する。
まずは比較しやすいようにSCOREとフレームレートのデータをグラフで表してみた。これらのデータは、FF14ベンチマークのレポートの値を参考にしている。※PL=パワーリミット
フルHDの約1.7倍の解像度であるWQHDでも、RTX 3080はパワーを持て余しているように感じる。グラフを見ると、SCOREとフレームレートはどちらも100%から60%までは変化が少ないが、60%から50%にかけては大きく低下していることが分かる。50%だと最小フレームレートの落ち込みが酷いので、パワーリミットを下げるのは60%までに留めておく方が良さそうだ。
次に、GPU温度、ファン速度、GPUクロック、消費電力をグラフに表してみたので、それぞれを見てみよう。
RTX 3080 GAMING X TRIOの冷却性能は元々優秀なので、パワーリミットを下げなくてもGPU温度は70℃台前半に収まっている。ケースに入れた状態でこの結果はとても優秀。エアフローがしっかりしたケースであれば、RTX 3080 GAMING X TRIOのGPU温度は気にしなくて良いだろう。
ファン速度はGPU温度に比例して回転数を制御しているので、パワーリミットを下げてGPU温度が低くなれば、その分ファン速度も低くなる。パワーリミット70%以下だとファン速度の変動が緩やかで良い感じだが、元々静音性が高いビデオカードなので、パワーリミット100%でもファンノイズが気になる人は少数だろう。RTX 3080 GAMING X TRIOのファン速度は1500回転を超えるとケースに入った状態でもノイズが聞こえ始めるので、気になる人は1600回転以下に収まるように調整すれば良い。Define 7のような静音性が高いケースであればRTX 3080 GAMING X TRIOのファンノイズは殆ど気にならない。
気になるGPUクロックだが、当然ながらパワーリミットを下げればGPUクロックも下がってしまう。GPUクロックが下がるからといって、実際にゲームをしていて気になるのかと言われると微妙なところである。70%辺りまでならゲームをしていてもフレームレートの低下は感じ難いので、1600MHz辺りを維持していれば、余程重いゲームでない限り気になることはないだろう。
今回の検証で最も重要な消費電力について。GPUの消費電力はGPUのパワーに比例しており連動する。例えば、パワーリミットを70%にすれば消費電力は100%のときに比べて30%下がる計算になる。調整した分がしっかりと反映されているのは見ていて面白い。尚、この消費電力のデータはソフト読みなので、多少誤差があると思う。実際の消費電力はデータと異なると思うので、参考程度にお願いしたい。
下記のグラフは、ベンチマーク中の平均消費電力と、1フレームあたりの消費電力を表したもの。1フレームあたりの消費電力は、平均消費電力を平均フレームレートで割った数値になる。
パワーリミットを下げることにより、1フレームあたりの消費電力が下がっていることが分かる。つまり、パワーリミットを下げることにより、ワットパフォーマンスが向上しているということになる。ただ、ワッパが上がるからと言ってパワーリミットを下げれば良いのかと言ったらそうではない。パワーリミットを下げ過ぎれば電力不足でGPUの処理性能が低下してしまう。この辺りは自分で最適だと思う設定を探るしかない。
最初のフレームレートのグラフを見てもらうと分かると思うが、70%辺りまでなら最小フレームレートは殆ど下がらないし、平均フレームレートもあまり下がっていない。つまり、管理人おすすめの設定がパワーリミット70~75%である。このくらいだとフレームレートの低下を最小限にしつつ、消費電力を25~30%削減できる。消費電力=発熱量なので、消費電力が下がればGPU温度も比例して低くなる。全体的なパフォーマンスは上がっていると言って良いだろう。もちろん、重いゲームではパワーリミットを下げているとパフォーマンスが落ちる可能性が高いので、必要に応じてパワーリミットを上げるなり調整しよう。
RTX 3080の消費電力に閉口している人は、パフォーマンスアップを狙えるパワーリミットの調整を試してみては如何だろうか。