超高性能クーラー「Tri Frozr 2S」を採用するハイエンドモデルのRTX 3090をレビューしてみる。
特徴とスペック
- NVIDIA GeForce RTX 3090搭載
- 冷却性能を強化したオリジナルクーラー「Tri Frozr 2S」採用
- ブーストクロック 1,860MHz
- メモリクロック 19,500MHz
- 24GB GDDR6X 384bitメモリ搭載
- DisplayPort×3、HDMI 映像出力端子装備
- ボード1枚で4画面出力が可能
- NVIDIA DLSS、G-SYNC、NVLink対応
- DirectX 12 Ultimate、OpenGL 4.6、Vulkanをサポート
- 専用ユーティリティ「Dragon Center」対応
- LEDカラーのカスタマイズが行える「Mystic Light」
- MSI独自のユーティリティツール「アフターバーナー」
スペック比較表
MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G | MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G |
GeForce RTX 2080 Ti FE | NVIDIA TITAN RTX | |
GPUアーキテクチャ | Ampere | Ampere | Turing | Turing |
製造プロセス | 8nm | 8nm | 12nm | 12nm |
GPUコア | GA102 | GA102 | TU102 | TU102 |
トランジスタ数 | 280億 | 280億 | 186億 | 186億 |
ダイサイズ | 628 mm² | 628 mm² | 754 mm² | 754 mm² |
CUDAコア数 | 10496 | 8704 | 4352 | 4608 |
RTコア数 | 82 | 68 | 68 | 72 |
Tensorコア数 | 328 | 272 | 544 | 576 |
TMU数 | 328 | 272 | 272 | 288 |
ROP数 | 112 | 96 | 88 | 96 |
ベースクロック | 1395 MHz (GPUーZ読み、FEと同等) |
1440 MHz (GPUーZ読み、FEと同等) |
1350 MHz | 1350 MHz |
ブーストクロック | 1875 MHz (FE:1695 MHz) |
1815 MHz (FE:1710 MHz) |
1545 MHz | 1770 MHz |
メモリ規格 | GDDR6X | GDDR6X | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ容量 | 24 GB | 10 GB | 11 GB | 24 GB |
メモリ速度 | 19.5 Gbps | 19 Gbps | 14 Gbps | 14 Gbps |
メモリバス幅 | 384 bit | 320 bit | 352 bit | 384 bit |
メモリ帯域幅 | 936 GB/s | 760 GB/s | 616 GB/s | 672 GB/s |
消費電力 | 420W (FE:350W) |
340W (FE:320W) |
250W | 280W |
MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G(以下、RTX 3090 SUPRIM X)のベースクロックは非公開だが、GPU-Z読みで1395MHzだった。これはFounders Editionと同じ数値。
RTX 3090 SUPRIM Xはオーバークロックモデルであり、ブーストクロックがFounders Editionに比べて11%高速である。ちなみに、同社の「GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G」のブーストクロックは1785MHz(FE比5.3%高速)となっている。
RTX 3090 SUPRIM Xの消費電力は、Founders Editionと比較して70W程高くなっている。まぁ、このクラスのビデオカードを購入する層は消費電力を気にすることはないと思うが。
レビュー
パッケージと付属品
パッケージは高級モデルにありがちな上に開けるタイプ。この紙製ケースにはガイド等が収納されている。
なんと、マウスパッドが付属している。おまけだから安っぽいんだろうと思うが、厚みは4mm位で重さがある割としっかりとしたもの。普通に使える。
マウスパッドを取り出すと、RTX 3090 SUPRIM X本体が収納されている。手前のは組み立て式のビデオカードホルダーで、垂直に支えるタイプのもの。
ハイエンドモデルお約束のラッキー君のマンガ形式ガイドブック。ちなみに、日本語版はmsi公式サイトで見ることができる。
RTX 3090 SUPRIM X 外観
ドラゴンエンブレムは透明パーツが使われており、RGB LEDが透過して光る。また、クーラーやバックプレートのエッジ部分にダイヤモンドカット加工が施されており、非常に高級感がある。画像じゃ伝わらないかも知れないが、ここまで高級感のあるビデオカードは初めて見た。バックプレートは触った感じだとアルミ製で、裏側にメモリ冷却用のヒートパイプが内蔵されている。
カードサイズとインターフェース
カード本体のサイズは、336 x 140 x 61mmで、重さは1895g。ブラケットからは目視で約35mm程突き出している。奥行きの無いケースは要注意。厚みはほぼ3スロットなので、直下に何か拡張カードを取り付けると隙間がほぼ無くなる。
直線的なデザインなので画像だとそこまで大きくは見えないのだが、実物を手にしてみるとサイズと重さに圧倒される。比較しやすいように「MSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」と並べてみた。
ファンが同じデザインだからと騙されてはいけない。
尚、RTX 3080 GAMING X TRIOの大きさは、323 x 140 x 56mmとなっている。
冷却用ファンは 、一対のファンブレードをリンクされた外輪で結合させた独特の形状。通常のファンよりもエアフローを集中させることが可能となっている。ファンサイズは約95mmで同じものが3基搭載されており、軸はダブルボールベアリング仕様になっている。GAMING X TRIOシリーズのファンサイズは約90mmである。同じように見えて実はRTX 3090 SUPRIM Xの方が少し大きくなっている。ちなみに、ファンのドラゴンエンブレムは立体的な造形になっており、メッキ加工されている。
ファンのデフォルト制御はセミファンレスモードなので、負荷が小さくてGPU温度が一定以下(55℃以下)だと、ファンの動作は停止する。負荷が低いと60℃弱でも停止しているので、負荷とGPU温度の両方を監視していると思われる。
補助電源コネクタ数は3本で、全て8ピン仕様になっている。コネクタ部分は画像を見てもらえれば分かるが、内側に10mm程引っ込んでいる。RTX 3090 SUPRIM Xは消費電力が非常に高いので、8P+8P等の二股に別れているケーブルではなく、可能ならそれぞれを1:1で接続した方が良い。
デュアルBIOSが搭載されており、GAMINGモードとサイレントモードを設定できる。どちらもセミファンレス動作になる。優秀なクーラーのお陰でGAMINGモードでもファンの動作は非常に静か。購入時はサイレントモードになっていたが、どちらがデフォルトなのか不明。
DirectX対応バージョン | 12 API |
OpenGL対応バージョン | 4.6 |
最大同時出力画面数 | 4 |
映像出力端子 |
DisplayPort x 3 (v1.4a) / HDMI 2.1 x 1
|
最大画面解像度(デジタル) | 7680×4320 |
インターフェースは、DisplayPort x 3 (v1.4a) / HDMI 2.1 x 1 で、最大同時出力画面数は4画面、最大画面解像度は7680×4320、DirectX対応バージョンは12 API、OpenGL対応バージョンは4.6となっている。
分解
分解レビューに関しては以下の記事をアップした。
動作モードとイルミネーション
RTX 3090 SUPRIM Xはメーカーが配布している専用ユーティリティで動作のモードを設定できる。定番の「Afterburner」や「Dragon Center」がそれである。AfterburnerはオーバークロックツールなのでインストールしなくてもRTX 3090 SUPRIM Xは問題なく動作するが、Dragon Centerでは細かい制御が不可能なので、オーバークロック等、細かく動作を設定したい場合はAfterburnerをインストールすると良い。AfterburnerとDragon Centerは併用可能なので、管理人は両方インストールしてある。ダウンロードは下記の公式サイトから行える。
Dragon Centerを利用すれば、RTX 3090 SUPRIM Xの動作モードやセミファンレスの切り替えが行える。下のスクショはDragon Centerのウィンドウ。
ホームタブにある「User Scenario」を開くと5つのアイコンがあるが、これは動作モードの種類になる。パフォーマンス、バランス、サイレント、クリエイト、カスタムの中から選択できる。何も選択していない状態ではデフォルト動作になる。パフォーマンスモードにするとブーストがかかるので、オーバークロック状態になりファンの速度も上昇する。サイレントモードにすると、静音性を優先してクロック周波数等が低めになりファン速度も低くなる。好みのモードを選ぼう。
カスタムモードの設定であるが、設定アイコンをクリックすると設定ウィンドウが開く。ここではCPUやGPU等の動作をある程度細かく設定できるようになっている。パワーリミットの調整は行えないので、細かく設定したいのであればAfterburnerの方で行う。管理人が試した限りでは、クロック周波数やメモリ周波数はDragon Centerの設定が優先される。パワーリミット等、Dragon Centerに無い項目はAfterburnerの設定で動作する。
セミファンレス動作の切り替えは、ツールタブにある「Graphics Fan Tool」で行う。「Zero Frozr」が有効になっていれば、セミファンレスモードに対応しているものはセミファンレスモードで動作するようになる。セミファンレスなのにファンが常時回ってる!という場合はここの設定を確認しよう。「クーラーブースト」というのはスタートさせると数十秒間ファンが全開で動作する。手動でクールダウンさせたいときに使おう。放っておけば勝手に動作は止まる。
イルミネーション設定は、ホームタブにある「Mystic Light」で行う。以前は「Mystic Light 3」というユーティリティでイルミネーションの制御は行えたのだが、現在はMystic Light 3のダウンロードは行えない。このユーティリティはDragon Centerに統合されているので、イルミネーションの設定を行うにはDragon Centerは必須である。
ちなみに、CPUとGPUの温度に対してシステムファンの速度を調整可能なユーティリティもある。
この「FROZR AI Cooling」はシステムファンの速度を調整するもので、マザーボードに搭載されているファンコントローラーよりも賢い。マザーボードの方だとシステムファンの制御は、CPUやGPU等、どれを監視して制御するのかをひとつしか選べないが、FROZR AI CoolingではCPUとGPUを同時に監視している。つまりどちらか一方が高負荷になれば、その負荷に応じてシステムファンの速度を調整してくれる。設定次第ではあるが、CPUが40℃辺りでも、GPUが70℃になればシステムファンの速度は上昇する。当然逆も動作する。自分で設定したい場合は、マニュアルモードを選択する。
グラフはシステムファンの速度を表すものであり、赤い方がCPU、青い方がGPUとなっている。緑色の丸いアイコンは現在の値。上の画像の状態では、GPUの設定した値よりも緑の丸は低い位置にあるが、これはGPUの温度が60℃を下回っているからである。特に難しいユーティリティではないので、Dragon Centerをインストールしたら活用してみよう。
尚、FROZR AI Coolingは、msi製マザーボードでも非対応のものがある。タブが表示されていなければ非対応だと思われるので、その場合は利用不可能になる。
検証
軽く検証を行ってみる。ドライバソフトは現時点で最新であるNVIDIAの「GeForce 461.09 Driver」を使用する。RTX 3090 SUPRIM XのBIOSは「GAMINGモード」にしてある。使用するユーティリティは「Dragon Center 2.0.100.0」、「Afterburner 4.6.2」どちらも現時点で最新バージョン。
Ryzen 9 5950Xは、Precision Boost Overdrive有効で他は定格動作。メモリ速度は3600MHz CL16という設定になっている。室温は約22℃。
パソコン構成 | |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G |
CPU | AMD Ryzen 9 5950X |
CPUクーラー | Noctua NH-U12A |
メモリ | G.Skill TridentZ Neo F4-3600C16D-32GTZNC(速度3600CL16) |
マザーボード | MSI MEG X570 UNIFY |
電源ユニット | Seasonic PRIME Titanium 1000W |
まずは、みんな大好き「FF14 漆黒のヴィランズ」で検証してみる。ベンチマークは、フルHD、WQHD、4Kをそれぞれ最高品質の設定で行う。
検証して取得したログをグラフにしてみた。
スコアとフレームレートのグラフ。フルHDとWQHDは流石に軽いようで、最小フレームレートがどちらも変わらない結果となった。4Kでも平均100fps以上出ており、ストレス無くプレイすることができる。もっと重いゲームで検証するべきだったか・・・。
こちらは4K解像度でベンチマークをしたときの、GPUクロックと消費電力(ソフト読み)のグラフ。
GPUクロックは平均で1900MHz近く出ており、後半の負荷が高まるシーンでも落ち込むことなく安定している。クーラーの冷却性能が優秀なお陰だろう。
消費電力はスペック通り420Wに張り付いている。これは4Kなのでほぼフルパワーで動作しているが、フルHDやWQHDだと負荷の軽いシーンでは消費電力は少なくなる。
こちらは4K解像度でベンチマークをしたときの、GPU温度とファン速度のグラフ。
消費電力がほぼ420Wを維持しているにも関わらず、GPU温度は70℃を超えていない。ケースに入れた状態ではないにしても、凄まじい冷却性能である。ファン速度は、1700rpm辺りでもそこそこ静かなので、静音ケースに入っていれば気にならないと思われる。管理人が使用したことのあるハイエンドクラスのビデオカードでは、一番静かに感じる。
次に、「3DMark」で検証してみる。
う~ん、すごいスコア。どれも平均より高めのスコアとなっているが、PBOが有効なことと、メモリ速度を変更しているからであろう。注目して欲しいのはグラフィックススコアの方である。
クラッシュについて
発売当初はクラッシュ問題が話題になったが、今の所、管理人の環境では遭遇していない。というより、管理人が所有しているRTX 30シリーズ全てで購入時からクラッシュは一切無いし、仮にあったとしても既にソフトウェアレベルで対策されている。
この件に関して情報を発信している個人ブログやサイトは誤情報が多いので、心配な人はメーカーに直接確認した方が良い。管理人が言うのも難だが、ソース元を調べるのは重要。
まとめ
RTX 3090は、最高を求めるエンスージアストの為のGPUであり、位置付けもTITANを継承するものとなっている。「8Kゲーミング」を謳う唯一のGPUであり、現時点で最強最速を誇るGPUである。
- CUDAコア数 1万超え
- GDDR6Xメモリ 24GB
- 価格は従来のTITANより安価
この3つがポイントだろう。RTX 3080でもCUDAコア数は8704基と多いが、RTX 3090はそれを上回る10496基搭載されている。メモリ容量はTITANの後継に相応しく、GDDR6Xメモリを24GB搭載。ハイスペックでありながら、従来のTITAN RTX(国内価格32万円)よりも大幅に安価なのだ。つまり、コストパフォーマンスが高いGPUとなる(乱暴)。そう言い聞かせて管理人は購入した訳であるが、後悔はしていない。
※複数のPCショップでRTX 3090の値上がりを確認。税込み22~25万円辺りだったのが、21/2/11現在、26~28万円となっている。半導体不足の影響と思われる。