外部パワーアンプのゲイン調整について解説

カーオーディオ用外部パワーアンプのゲインコントロールの調整方法について解説する。

この記事ではカーオーディオや電装に対してそれなりの知識がある事を前提としている。なるべく分かりやすく解説をするが、全くの素人だと理解するのは難しいかも知れない。

ゲインとは、簡単に言うと入力と出力の比である。ゲインのレベルを上げていくと、入力された信号の増幅される比率が高まり出力される信号レベルは大きくなる。しかし、際限なく出力が上昇する訳ではないので、一定のレベルになると頭打ちになるポイント(パワーアンプなら出力の限界)がある。出力された信号は頭打ちになると歪み始めるので、常用する領域内で信号が歪まないように調整する必要がある。大きく歪めば体感できるが、微妙なラインだと感覚で調整するのは至難の業である。適切なツール無しで完璧に調整することは困難なので、一般的にはデジタルテスター(周波数測定機能付きのもの)やオシロスコープ等で信号の状態を確認しながら調整する。カーオーディオで外部パワーアンプを追加する場合、避けられないもののひとつがこのゲインの調整である。

※歪み:ひずみ、ゆがみ、読み方はどちらでも正解だが、オーディオではひずみが一般的。

外部パワーアンプだけの調整であれば比較的簡単なのだが、悪いことにメインユニットでも信号の増幅が行われている。まずは、外部パワーアンプの調整を行う前にメインユニットの出力信号の状態を確認する必要がある。例えば、ボリュームが50まであるメインユニットでボリュームを最大の50にしても信号が歪んでいなければ、このメインユニットのボリュームは最大の50のままで問題なく使用できる。しかし、ボリューム40以上で信号が歪んでしまう場合、それ以上のボリュームで使用すると歪んだ信号を外部パワーアンプで増幅するようになってしまう。これだと音質が悪化してしまうので、40以上の領域は使えないことになる。つまり、信号が歪む一歩手前の39までが実際に使用可能な領域となる。メインユニットによって性能は様々なので、まずは自分の使用しているメインユニットの使用可能なボリュームの上限を調べる。外部パワーアンプのゲイン調整を行うのはその後になる。

この波形は「100Hz 0dB」のサイン波(正弦波)で、PCソフトにて表示したもの。ピーとかポーとか鳴っているアレである。縦軸が信号の強弱(dB)で、横軸が時間。この波形は山の曲線が滑らかで、信号が一切歪んでいないのが分かる。ステレオ音声なので、グラフの下にも同じ波形がある。

こちらは上のサイン波に+6dBの補正をした状態。山の頂上が平らになり歪んでいる。つまり、クリップしている状態。出力の小さいパワーアンプで無理にゲインレベルを上げた場合こうなる事が多い。こういった信号だとスピーカー、特にツィーターにダメージを与えてしまうので、歪みの無い波形になるように調整する必要がある。適切に調整して音量が足りないと感じる場合は、素直に出力の高いパワーアンプに交換する方が良い。また、スピーカーを労って出力の小さいパワーアンプを使う人が居るが、これは間違った判断である。高出力のパワーアンプでゲインレベルに余裕を持たせる方がスピーカーに優しい。これに関して詳しく説明しだすと本題からかけ離れてしまうので、また別の機会で。

実際に波形を見るには、一昔前だと高価なオシロスコープが必要で敷居が高かったが、今は安価なオシロスコープが販売されている。良い時代になったものだ。

このオシロスコープの使い方は実に簡単で、プローブのプラスとマイナスを測定したい機器の音声出力に接続するだけである。波形はひとつしか見れないので色々と比較はできないが、音声信号を見るには十分。操作はスケールの変更位しかできないので、余程機械に弱い人でも無い限り使い方はすぐ理解できると思う。尚、価格が価格なので、精度を求めてはいけない。無いよりマシである。オシロスコープやデジタルテスターで音声信号の波形や電圧を確認するには、一般的に「1000Hz 0dB」のサイン波を使用する。なので、予めUSBメモリやCD-R等に、音声ファイルを用意しておく。間違えてもMP3等の圧縮音源にしないように。音源はPCソフト等で作成できるし、ネット上に公開されているものもある。必要なら各自で用意して欲しい。

メインユニットの音声信号の波形を確認するには、メインユニット背面にある音声出力端子(RCAフロント出力等)にオシロスコープのプローブを直接接続する。予め、プローブを接続しやすい変換ケーブルを自作しておくと楽ちん。このとき、スピーカーケーブルは取り外しておく。イコライザーやタイムアライメント等、音質調整機能は全てオフにしておく。オートイコライザーが付いているユニットであれば、これもオフにするのを忘れずに。

用意した音声ファイルを再生し、メインユニットのボリュームを最小から徐々に上げていく。オシロスコープに表示される波形が大きくなっていくことを確認しよう。波形が出てこないようなら、画面のスケールを適切に調整する。一定のレベルで波形の山の頂上が崩れたり平らになると思うが、そのポイントの一歩手前が使えるボリュームの上限値になる。管理人のクルマに付けているサイバーナビ(AVIC-CL911)は、最大ボリューム40でも信号が歪むことはなかったが、今回はボリューム30にしてゲイン調整を行った。普段そんな領域は使わないし。音質を追求するなら、ちゃんと歪む手前のボリュームにする。メインユニットにもよるが、プリアウト電圧は概ね1.00~2.00Vの間になると思う。オシロスコープを接続できない等、事情があってボリュームをどの位置にしたら良いのか分からない場合、最大の7割付近(最大50なら35付近)にしておくと事故が少ない。

メインユニットの使えるボリュームが分かったら、今度は外部パワーアンプのゲイン調整を行う。ラインケーブルをパワーアンプに接続し、スピーカーケーブルはまだ取り付けないでおく。プローブをスピーカー出力端子のプラスとマイナスに接続し、パワーアンプのゲインレベルを徐々に上げていく。一定のレベルになると波形が歪むので、その一歩手前で調整する。音質を追求するならこの方法が一般的だが、普段ボリュームをあまり上げない人は、少しゲインレベルを下げても良いだろう。ゲイン調整で重要なのは、フロント、リア、左右等、全てのラインのゲインレベルを歪み無しで同一に調整する事である。

デジタルアンプの波形はギザギザで汚いが何故か音質は良い

上の画像は「carrozzeria PRS-D800」パワーアンプの出力波形で調整中のもの。デジタルアンプなので波形がギザギザになっている。歪んでいる訳ではないのでご心配なく。アナログアンプであれば綺麗な曲線になる。オシロスコープで波形を見れば一目瞭然だが、カーオーディオ用のデジタルアンプとアナログアンプの違いをハッキリと聴き分けられる人は少ないと思う。管理人は違いが分からない。

以下は、主に参考にする値。

Vmax:画面内の最大電圧、ピーク値
Vmin:画面内の最小電圧
Vpp:VmaxとVminの差
Fre:1秒間に繰り返す波の回数、周波数
Vrms:実効値

※DUTY比:1波長のうちのONとOFFの比率。デフォルト設定の50.0%で問題ない。

基本的に、電圧は各ラインのゲインレベルを統一するために参考にする値である。電圧を見る場合は、実効値(Vrms)と、ピーク値(Vmax)のどちらかの値で揃えれば良い。歪んでいなければどちらを参考にしても同じである。管理人は実効値を参考にして揃えている。同じ交流波形の家庭用電源で例えるなら、実効値は約100V、ピーク値は約141Vである。

パワーアンプのゲイン調整で波形を見れるのであれば、電圧の値は重要ではない。歪んでいなければあまり問題はないので、好きなレベルに調整しよう。音質を重視するなら歪む一歩手前であるが、あまりにも電圧が高いようなら少し低めにした方が良い。普通に使うなら実効値10.00~20.00V辺りで十分だと思う。くどいようだが、重要なのは全ラインのゲインレベルを歪み無しで同一に調整する事である。つまり、電圧をなるべく揃える事である。

管理人好みの調整方法であるが、歪まない限界付近までゲインレベルを上げるのは精神衛生上よろしくないのと、普段からボリュームをあまり上げないので、ゲインレベルは低めに調整している。ギリギリを狙ってもある程度下げても、正直違いが分からないのである。

実際にゲイン調整をしてみると、かなりシビアであることが分かると思う。パワーアンプによってはつまみに少し触れただけでも電圧が変動する。慣れれば簡単な作業であるが、慣れない内は大変かも知れない。頑張って調整しよう。

ゲイン調整に関しては以上。

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